はしやんソフト

#1から始めるウィザードリィ
第64話 「禁断の呪文 その2」

初版:2003年06月22日
更新:2003年12月25日

S)TORY

ヴァンパイア・ロード「いちいち癪に障る奴らだ!」

激上するヴァンパイア・ロード。普段の女言葉は消えていた。 目の前の水晶玉は粉々に砕け、ヴァンパイア・ロードの手の爪の間からは、 青い鮮血が滴り落ちている。

ヴァンパイア・ロード「なぜ私の魔力を無効化するだけの力を持った人間がいる!なぜトゥルーワードを扱える人間が存在する!」

魔法が発動する最後の瞬間、彼は皮肉にもトゥルーワードで魔法を発動させようとした人間に力を貸した。 十分な魔力がないままトゥルーワードよる詠唱を行えば、魔力が暴走し、大きな災いが起こるからだ。
生を受けて千数百年、ヴァンパイア・ロードは、トゥルーワードを暴走させた愚かな人間を数多く見てきた。ある者は暴走した魔力に己の体を奪われ、ある者は大陸の半分を吹き飛ばした。
彼が力を貸さなければ、このダンジョンも、そしてこのダンジョンに身を置く自分も、一瞬にして消滅していただろう。緑の光に護られた冒険者たちを除いて…。

アイリーン「ユウ!」

アイリーンはカント寺院のベッドの上で、親友の名前を叫びながら目を覚ました。悪夢にうなされていたのか、びっしょりと汗を滲ませている。
ベッドの傍らにはロクリスが控えていた。

アイリーン「ロクリス…私は…」

詠唱の途中から、ダンジョンの床や壁はガタガタと揺れ始め、その音と揺れは次第に大きくなっていった。風がないはずの通路には突風が吹き込み、立っているのがやっとの状態だった。
そして、呪文が完成した瞬間、轟音と共に巨大な竜巻が現れた。敵の魔法使いの1人は壁に叩きつけられ、1人は体を引きちぎられた。
魔法使いたちを飲み込んだ竜巻は、次の獲物を求めるかのように、パーティの方へと動き出した。竜巻はアイリーンが握るペンダントの緑の光の結界と激しく干渉を起こし、そこいら中に魔法のエネルギー波を撒き散らした。
魔力のぶつかり合いは互角ではなかった。緑の結界はミシミシと音と立て、竜巻と接触している部分は大きく変形しつつあった。
だが次の瞬間、パーティを包んでいた緑の結界は青色に変色したかと思うと、いとも容易く竜巻をかき消した。次いで変色した結界はガラスのように音を立てて砕け散った。
そして全てが終わった時、アイリーンは床に崩れ落ちた。寺院に運ばれたとき、彼女の体中の骨という骨は全て粉々に砕け、絶命していたという。


D)ICTIONARY

トゥルーワード
魔法を構成する神聖語のこと。普段、魔法使いは神聖語を人間の発音に直し、短縮することで魔法の力をコントロールしている。もし、十分な魔力を持たない人間がトゥルーワードを発すれば、魔力が暴走し取り返しのつかないことになる。アイリーンがトゥルーワードを扱えたのは、魔法のペンダントとヴァンパイア・ロードの助力によるもの。ちなみに「ミームアリフ(大きい)・ラーイカフ(怒り)・ターザンメ(嵐)」は「MA・LIK・TO」のトゥルーワード。TILTOWAITだと「ターイラー(速やかな)・ターザンメ(嵐)・ウォウアリフ(光)・イェーター(解放)」。オフィシャルウィザードリィマガジンより。


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