S)TORY
HALITOの雨が止んだかと思うと、魔法使いの1人が青い光を放つ杖を掲げた。
今度は何が始まるのか…、一行は身構えた。だが、何も起こらなかった。
いや、変化はアイリーンの背中の上で起こっていた。
ユウの体が、杖の光と同じ、青い光で包まれていく。
アイリーン「なにを…」
状況が掴めずに困惑するアイリーンの背中で、死んだはずのユウが目を見開いた。
剥き出しの白目は既に人間のそれではなかった。
さらに閉じられた唇を割って、2本の鋭い牙が伸び出てきた。
別の生き物に生まれ変わろうとしている…そう表現するのが適当だろうか。
だがその変化はほんの一瞬だった。
ユウのポシェットに入っていた白紙のカブケンが光を放ち、
弾けるようなバチッという音と共に、体を包む青い光を取り払われた。
次の瞬間、ユウの体はアイリーンの背中の上で灰になった。
わけのわからぬまま、灰になった友人にアイリーンは驚いたが、驚いたのは彼女だけではなかった。
ヴァンパイア・ロード「まさか…。このヴァンパイア・ロードの魔力を上回るアイテムをあの小娘が持っていたとでもいうの?いや…転生は確かに成功していたわ…。それじゃあ何…サキュバスとして生きることよりも、灰になることをそのアイテムが選んだとでもいうの!?」
再び、魔法使いたちの「砲火」が始まった。今度はHALITOだけではない、強力な魔法が次々とロクリスたちを苦しめる。
激しい戦闘の中、アイリーンはポケットから小袋を取り出し、ユウの灰を詰め始めた。
残った灰は、敵の嵐の呪文によって残らず吹き飛ばされた。あと少しでも遅かったら…アイリーンは胸を撫で下ろした。
だが…。次の瞬間、敵のHALITOが狙ったかのように袋を貫いた。
袋に開いた穴から、親友を蘇生する希望が少しづつ失われていく…。
アイリーンは、穴を押さえながら、こぼれた灰を無我夢中で拾い集めた。